前から気になっていたつげ義治の聖地の太海の海にいってきた。太海の海といえば、太海フラワーセンター、仁右衛門島が有名で、今から３０年位前に行ったことがあるが、当時の記憶はうすぼんやりとして、定かではない。 　今回は、つげ義治の「ねじ式」を読んでいて、どうしてもつげが見た海を見たくなったのでいってみた。初夏のある昼下がりである。太海フラワーセンターは、もう営業していなかった。隣にある磯釣りセンターがほそぼそと営業しているだけだった。自動車は、太海フラワーセンターの駐車嬢に駐車して、太海の漁村を太海駅を目標にカメラを持ちながら歩いて見る。太海の海は、風のなく穏やかで静かある。つげの「ねじ式」の場面にあった場所は、下調べをしていたので、すぐにわかった。「ねじ式」のあまりに有名な、機関車が到着した場所。そこにたつと、つげがかつてその場所にたっていたと思うと、感慨深いものが込み上げてくる。つげと同じ光景をみているのだ。 　メメクラゲの海岸は、波がほとんどまるで内房の海岸のように静かで穏やかだった、太海漁港に停泊している漁船は、まるで二重像のようにも見える。 大東フラワーセンターまで歩いて見る。漁港付近の道は狭く、崖に張り付いた民家の間の狭い路地をすり抜けるようにして歩いて行く。太海浜あたりは、比較的平地ではあるが、道は狭く、まるでラビランスの迷うがどときの入り組んだ路地を抜けて行かなければいけなかった。 漁村の風景をつげ義春が、好んでいた理由がわかるような気がする。都会のラビリンスとは違う魅力がある。 迷宮を抜けて旧国道を渡ると太海駅である。太海駅は、かつては有人であっただろうとの痕跡が残る駅である。太海駅から太海海岸、太海フラワーセンターまでは、徒歩圏内なので、かつては夏になると海水浴目当ての観光客で賑わったのであろう。房総の海水浴は、一時はすごかったらしく、当時の国鉄は、房総夏ダイヤといって特別ダイヤを組んでいた。房総特急群が輝いていた時期である。その象徴的存在が、特急あずさが内房線経由で、千倉まで延長運転ししていた。外房線は、確か、特急わかしおが安房鴨川から、中央線に乗りいれて甲府まで運転していた。今となっては、昔の話である。