小雨降る中、記憶の中の風景を探しに、３０年くらい前に住んでいた上板橋に行く。上板橋駅を降りて駅前の風景は、記憶の中の断片と重なりあう部分もあるが、全く摺りあわない部分もあった。雨が記憶の中の風景を洗い流してしまったかのように、既視感、未視感が入り混じって複雑な感情をもった。３０年前の記憶なんか曖昧なものでしかない。記憶をたよりにかつて住んでいたアパートまで歩いてみる。かつては毎日のように渡った踏切をわたり、道順は間違いはないのだが、かつてそこにあった建物がなかったり、建て替えられてたりしていた。当時のままの建物を見ると急に３０年前に逆昇った気持になるが、それは、直ぐに裏切らて現実の引き戻されてしまう。３０年間という時間は、振り返ると短く感じるが、３０年という時間は間違いなくあるのである。